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Appleの教育関連イベントに見るジョブズの遺志

Appleが、かねてより案内していた同社の教育関連イベントにおいて、「iBooks2 for iPad」、「iBooks Author」(Mac)、および「iTunes Uアプリ」を発表しています。もちろん同日リリースで、料金は無料です。

「iBooks 2 for iPad」ではビデオ・音声などメディアサポートを大幅に強化し、さらにそのためのオーサリングツールである「iBooks Author」ではMac OS X(Lion)上で制作およびパブリッシュが行える機能を提供しています。

iBooks 2 for iPad

まず「iBooks 2 for iPad」ですが、iBooks 2.0にあたるアップデートとしてリリースされますが、かなり大掛かりなアップデートとなっています。すでに日本語ストアでもアップデートが可能となっています。

「なめらかなナビゲーション」「美しいグラフィックス」「便利で簡単なメモ機能」という3つのフィーチャーを強化されており、従来のテキストと写真に加え、ビデオ・オーディオさらにはインタラクション機能を加えています。これにより単なる電子書籍ビューワであったiBooksがビデオや音声、3Dオブジェクトなどを配置することが可能になっています。

もちろんピンチイン・ピンチアウトなどiOS独特のUIをそのまま活用することでこれまでにないダイナミックなメディアを取り扱うことができるようになります。一言で言えば、これまで一部アプリ開発業者が手がけてきた「インタラクティブな電子書籍」と同等の機能を有するようになったといっていいでしょう。

ただし教育関連イベントで発表する以上、それだけでにとどまりません。

気になった部分や重要な箇所でメモを取ることが可能で、スワイプすることで蛍光マーカーでハイライトすることも可能です。このメモは縦3インチ×5インチ(8*13cm)の学習カードとして取りまとめることも可能でフラッシュカードのように表面にトピックを裏面にその定義を記すなどの使い方もできます。

具体的な使い方としては、教師がiPadのiBooks2上の教科書にそって講義を行いながら重要な箇所ではオブジェクト(たとえばDNAのらせん構造など)を生徒にポイントさせ、3Dオブジェクトを回転させ様々な方向から確認することができるでしょう。

iBooks Author

次にこのiBooks2で取り扱う教材を制作するオーサリング環境についてですが、こちらはMac用に「iBooks Author」が用意されています。iBooks2で利用可能なインタラクティブなメディアを、これからは個人で制作できるようになります。

iWorksと同様にテンプレートを選択した上で、テキストや画像、ビデオや音声などのメディア、マルチタッチオブジェクトを埋め込むことができるようになっています。

こうして制作したメディアは、iBookstoreで配信可能であるということです。配信するためのライセンスは不明ですが、Appleではこれを教育用教科書に応用することを提案しており、すでに150万の教育機関でiPadが採用されていますが、今回のiBooks2に関してはさらに全米の教科書の90%を取り扱っているPearson、McGraw Hill、Houghton Mifflin Harcourtなどとの提携を済ませたといいます。

教材についても準備されており、すでに米国高校生向けの教材が1冊14.99ドルでダウンロード可能になっています。

iTunes Uアプリ

これらとは別に「iTunes U」の拡充も行なっており、iOSデバイスからこれらを視聴できるアプリもリリースされています。ダウンロードはこちらから。

この「iTunes U」では世界各地の有名大学の無料講義が閲覧でき、こちらでは代数から動物学まで数千の科目について50万を超える無料の講義が用意されています。

スタンフォード、エール、MIT、オックスフォード、カリフォルニア大学バークレー校、MoMA、ニューヨーク公共図書館、アメリカ議会図書館などに加え東大も昨年8月に参加を発表しています。

ジョブズの遺志

今回の発表の終わりに、フィル・シラーは例によって文化の交差点の話を繰り返しました。

我々Appleは、テクノロジーとリベラルアーツの交差点にいる

そして、かつてMacintoshの宣伝に使ったあの文句を繰り返します。

“Wheels For the Mind.”

ご存じの方も多いでしょう。これはMacintoshを売りだしたときにイメージとして使った写真に添えられた言葉です。

wheels-for-the-mind

つまり、コンピューターは知的自転車であると。

そしてフィル・シラーは最後に次のような言葉でイベントを締めくくります。

Appleは技術が人々の生活に役立つことを示していきたい。

Appleやジョブズが技術革新を成し遂げたという人もいますが、必ずしもそうではないという人も多くいます。

私自身、かつて70年代にゼロックス社のPARC(Palo-Alto研究所)において、現在の基礎を支える数多くの技術研究がなされていたことを知っています。そして若き日のジョブズがそこを訪れていたことも。

しかし少なくとも言えることは、Appleはかつて誰もが夢見、そして抱いたパーソナルコンピューティングの未来というものを、人々の望む形でたしかに実現してみせたということです。完全ではないにしろ、少なくとも他社とは違うやり方で。

改めて確認するまでもなく、かつて本田宗一郎氏が喝破したように「人様の役に立たない技術などいらない」のです。

技術はそれ単体では役に立ちません。殊にパーソナルコンピューティング技術は、組み合わされ、ソフトウェアを伴うことで初めて人々の役に立つものとして現れるのです。要素技術だけでも足りませんし、ソフトウェアだけでも不足なのです。

Appleやジョブズはそれを明確に意識し、そして次々と実現してみせているということは動かしようのない事実です。そしてその遺志は、ジョブズ亡き後も間違いなく引き継がれているということを再認識するイベントであったということです。

もちろん電子教科書それ自体が教育現場をすぐに一変させるという話ではありません。しかし、人間という生き物の可能性を常に見つめ拡大することに対して、大きな力になる一歩であるということは間違いないでしょうし、Appleはその努力を怠っていないということは出来るかと思います。

日本人としては口惜しい限りですが、現在もAppleは時代の先端を走っています。


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