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AppStoreという特殊な市場でのチャレンジ

先に開催されていた東京ゲームショウで、スクウェア・エニックスの安藤氏が行った発言が話題になっています。

※10/4追記。なんか勘違いトラバを送っている人がいるようなので文末に追記しておきました。

4Gamer.net ― iPhoneアプリは安すぎる!? スクウェア・エニックスの安藤氏に,この発言の真意を聞いた

この意見にはやはり賛成できません。

いくつか疑問を感じるのですが、私の感じる疑問は大きく次の3つです。

  1. 適正価格とは何を意味するのか?企業にとってはアプリ1本ごとの単価ではなく、総売上(+利益率)ではないのか?
  2. コントローラ+ボタンが、すべてのゲームにおいて適切なインターフェースなのか?
  3. なぜスクウェア・エニックス単体でやらずに他企業に呼びかけるのか?

順序だてて書いて見ようと思ったのですが、今までの繰り返しとなりどうも書いていてつらいものがありますので単刀直入に書いて見ます。

結局、AppStoreという新市場、iPhone/iPod touchという新しいUIを搭載したハードウェアに(頭が)ついていけてないだけではないのでしょうか?

確かにいままでのゲームプラットフォームは、ゲームデベロッパーやパブリッシャーの意見を汲み取りその上で過去資産などが移行しやすい形で提供されたため、新ハードウェアといえどリスクは少ない状態で踏み出すことができました。もちろん、ローンチタイトルとして用意されたゲームコンテンツに、それだけの影響力があったことも大きいでしょう。

しかし、Appleはそうした現状のゲーム市場というものとはまったく別の市場、異なるハードウェアを「ユーザー」に提案し、多くのユーザーがそれを熱狂的に受け入れたのです。その新市場は今までの様々な常識が通用しない世界となっており、だからこそ今までの市場では生まれてこなかった(またはスポイルされてきた)要素をもったゲームやアプリが日々多数生まれてきたと考えます。

例えばタッチインターフェースひとつとってもそうでしょう。

かつて任天堂がDSやWiiで新たなインターフェースを提案しましたが、ダブルスクリーンかつスタイラスという一見奇抜なインターフェースを搭載しながらも既存文法に則ったコントローラーをつけたDSがある程度サードパーティデベロッパーでも成功の余地があったのに対して、既存のコントローラー概念を覆してしまったWiiではサードパーティデベロッパーはいまだに産みの苦しみから這い出ることができずにいるようです。

翻ってAppStoreを見ると、Appleが搭載してきたタッチインターフェースや様々な搭載デバイスを、いままで見たこともないような驚くべき利用方法でゲームやアプリに取り入れたケースが枚挙に暇がないほどです。しかも多くは既存デベロッパーではなく、名もない開発者からの提案が多く目だつのもその特徴でしょう。

この彼我の差はどうして生まれたのでしょうか?

それには、AppStoreがゲーム専用プラットフォームのように既存パブリッシャーを保護したり参入障壁を設けることなく広く開発者を受け入れたことであることは否めないでしょう。特にタッチインターフェースでは、後から参入した大手デベロッパーが仮想Dパッド方式を搭載していましたが、それはAppStoreにおいてかなり初期に否定された(または用途がかなり限定された)ものの一つでしょう。全画面タッチインターフェースであるのに、それを活かそうとせず既存のゲームと同じ文法を持ち込もうとしたミスが原因なのです。

しかし私は大手デベロッパーの苦境を、まったく新しいハードウェアであるにも関わらずそれを使いこなし新しい遊び方を提案する努力を怠った結果がそのまま市場で評価されただけに過ぎないと見ています。

現に、市場価格が適正でないと主張するのであれば、それを自らの力で実現すればいいのではないでしょうか?それを自ら実現する以前に、その上TGSという場において(CESA会長を出しているはずのスクエニが)その同調者を求めるという行為は決して誉められたものではないでしょう。

※そういえばAppStoreのプレミアストアはどうなったんだろうと思いますが、たとえ氏が主張するような「ゲームメーカーとインディーズを区別した市場」を作ったところで、その価値がなければそのプレミアストアにおいてすら埋没し、さらにそうしたデベロッパーが多数を占めればプレミアストア自体が埋没するだけのことだと考えます。

さらに「PSPレベル」という言葉自体が非常に残念です。プラットフォームの限界にチャレンジせず、この程度でいいだろうとタカをくくっている姿勢がみえみえではないですか。常に限界を求めて努力するそうしたチャレンジ精神から生まれた作品こそが、「電話とメールとSafariとGoogle Mapだけ」という人までをも振り向かせるのではないのでしょうか?

任天堂の宮本茂氏をはじめ、日本のゲームデザイナーが世界で尊敬を集めるのには、それだけの訳があると思います。それは、常に常識を超えるチャレンジを行い、ゲームというものの存在を高める努力を怠らなかったからではないかと考えます。

いつのまに、日本のゲーム業界はリスクも取らず参入する前から採算性を計算するほどの超安定志向になってしまったのでしょうか。生まれてたかだか30年余りのゲーム業界で、固定観念を持って自ら行動の幅に制限をかけること自体が残念でなりません。

新しい市場、新しいハードウェアでは、既存の成功方程式をいったん捨て、一から再構築し直す努力とチャレンジが必要なのは言うまでもありません。それがコスト的に合わないというのであれば、記事にあるとおり「iPhone辞めようか」ということになるでしょう。しかし、「AppStoreは儲からない」と散々いわれているにも関わらず、今年のTGSでは日本を代表するようなゲームデベロッパー数社が改めてAppStore向けリリースを表明し、ニュースでも大きく取り上げられていました。

※取り扱いの大きさは、PSP goの不発や新作発表タイトル数の少なさなども少なからず影響しているでしょう。すでに既存UMDタイトルのPSP go対応が見送りになっていることなども報じられています。やはりビジネスモデルを変えるためには相当思い切った舵取りが必要なのです。

もちろん、今までのゲーム専用プラットフォームにしがみつき、成功方程式を手堅く踏襲することも企業戦略としては何も間違ってはいません。

しかしユーザーや市場は常に変化し続けるものであり、特に大手デベロッパーとしては常にその先を追い求め、真っ先にその先にあるものを提示してみせるというプロフェッショナルな精神を忘れて欲しくないものだと考えます。

※蛇足ながら、私自身は安藤氏が過去に出したゲームの中には好きな作品もあります。願わくば、もう一度ヤン魂を作っていたころの「噛み付かなきゃ」という気迫を見たいと願っています。

※10/4追記。最前線で戦っているからという理由で、生ぬるい言葉を掛けるほど相手に対して失礼なことはないでしょう。ましてやそれが顔見知りであるという理由から手加減するというのでは、まったく意味がないばかりかその相手を侮辱していることにもなると思ってます。最前線で戦っているからこそ様々な悩みを抱えており、それに対して真摯に意見をぶつける相手をこそ求めているはずです。逆に同調者を求める姿勢は、その人が最前線で戦っていないか、または辛い最前線から逃げる準備をしているということだと考えます。単に同調し知り合いだからと持ち上げるようでは、その関係は発展的な関係ではないでしょう。


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4 responses to “AppStoreという特殊な市場でのチャレンジ”

  1. いつも興味深く拝見させていただいております。
    今回の記事も興味深かったのですが、

    1、適正価格とは?

    に関してのみ、自分の意見を語らせていただきます。

    この場合の「適正価格」の概念など、所詮メーカー側に利益があるかないかが「適正価格」「非適正価格」を分ける物差しになっているのではないかと思うのですが(通常はそうではないのですが、安藤氏の求める「適正価格」とはこの事を指しているように感じられます)、実は企業にとって、ひいてはユーザーにとってもこのことが重要なのではないかと思っています。

    理由はというと非常に単純な話なのですが、大企業が力を入れて大作アプリを開発するには当然人件費、宣伝費が高騰していきます。例えば「iPhoneにFFが登場!」なんて事になった場合、仮に今の風潮の流れからそれを僅か数百円で販売したとしても利益を回収する事など到底不可能ですし、その結果利益の確保が使命でもあるメーカーが「よし!またiPhoneでソフトを開発しよう!」などとは到底思わないであろうからです。

    少数精鋭で安価にソフトをリリースしているメーカーの価格基準に大手メーカーが合わせても、それが大手メーカーの経営としては全く機能しない事は明白かと思います。

    結論としては、iPhoneというハードに誰でも満足のいく大作アプリをリリースし続けてくれるならば、内容に見合った高額アプリの登場は大歓迎!自分は少々高額なアプリでも購入し続けるぜ!!という事です。
    仮にスクエニ等の大手メーカーが満足度の高いアプリをリリースしてくれたとしても、それが(現在の安売り合戦の影響で)元の取れない市場だと判断されれば、2本目以降は続かないでしょうから。

    それ以外の点では非常に同意できます。
    「コントローラーにはやっぱり十時キーとボタンがないと安心できない」なんて考え自体、進化する事を拒否した保守的な古い考えだと思いますし。そういう人達が業界の最前線にいる限りは新しい流れはやってこないでしょう。

    自分も普段から結構管理人様と同じようなこういうことに頭を悩ませていたりするのですが、見ての通り文章力が足りていない物で、うまく文章にまとめる事が出来ません(笑)。
    いつか管理人様のように読ませる文章を書けるようになりたいものだ、と思っているのですが、なかなかうまくいかないですね。
    いつか、実際にお会いして意見の交換等をしてみたいと夢想しております。

    まだまだ言いたい事は山ほどあるのですが、ここらへんでやめておきます(笑)。
    長文失礼しました。

  2. こんばんわ。

    やはり、大手のゲームメーカーにはまだ、既存のパッケージ流通市場を脅かすほどダウンロード販売への移行を進めたくないというのがあるのでしょう。
    現状はソニーと任天堂あってのゲームメーカーですからApp Storeに本気になりたくてもなれないのかもしれません。

    価格設定が安すぎるというのも一時のキャンペーンなどでなければ、ほとんどは資金を回収し終えたか、そのままでは販売を見込めなくなったものなので全く問題が無いと思います(値下げするとやたら怒り出して評価を下げるユーザーがいますが、安藤氏も同じような意見なのでしょうかね)。

    確かかどうかは分かりませんが、パッケージ販売におけるゲームソフトメーカーの粗利は定価の3〜4割と聞いたことがあります(生産・流通コストなどがそこから引かれるのかは不明です)。ならば、App Storeでの販売価格は単純に考えればパッケージ販売の3〜4割程度が妥当な価格なのではないかと思います。無論、パッケージ販売のソフトと遜色無いクオリティ・ボリュームがあることが前提です。
    現状のラインナップはやはりまだ及び腰というか、そんな価格を付けられるほどの物はありません。
    パッケージ流通市場は構造的に低価格ソフトの販売が困難なので、App Storeでそれをしているような感覚です。

    プレミアストアに関しても、現状はトップセールスランキングがあるので高価格アプリが上位に来る事は難しくなくなっています。また、有名メーカーの高価格アプリであれば(善くも悪くも)良質なレビューがすぐに集まるでしょうし。

    安いにこしたことは無いにしても、パッケージ販売ソフトに比肩する出来であれば、パッケージ販売相場の3〜4割程度の価格なら私は出します。
    (余談ですが、PSP goのダウンロード販売モデルは、かなり高価格になりそうだという予測が出ているようです。恐らくはパッケージ定価の7割前後かと。しかも販売するかどうかの判断はソフトメーカーに委ねられます。夢は潰えました。)

    ソニー、任天堂の板挟みにあっている現状では、App Storeでそれらに比肩するものを低価格で販売するわけにはいかないというのがありそうです。
    要は、本気になってくれさえすれば全て解決しそうなものなんですが。

  3. 「iPhoneアプリは標準価格が安めなので、利益を上げるのが難しい」という話は、よく聞きます。確かに、300円じゃ1万本売れても、300万円ですから、大きな企業レベルではしんどいでしょう。
    でも、現状では、そーゆー市場なんだから、無理だと思ったら参加しなければいいだけの話のような気がします(将来は、数千円のアプリが普通に出て、たくさんの人が買うようになるかもしれませんが、、)。
    もともとアップル製品は、ゲームとは縁が薄かった歴史があるので、スクエニがアップル製品に興味を示してる! という事象は、アップルファンとしては「おお、認めてくださいましたか」と、うれしい気持ちはありますが、ま、その無理してまで来てくれなくてもいいと思うのが(私の)正直なところ。別にFFができなくても、iPhoneの価値に変わりはないし。コンビニでは、ドンペリは売ってないし、買おうと思う人もいないと思うのです。

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