iPhone 3G S登場で大きく変化するゲーム機市場

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一見マイナーチェンジに見えた新型機「iPhone 3G S」に隠された驚くべき性能と、同時に4千万台出荷が発表されたiPhone/iPod touchプラットフォームについて、その立ち位置を再度整理してみましょう。

戦略転換をはじめたゲームプラットフォーム

先日行われたE3 2009においてソニーグループのSCEは「PSP go」を発表し、ダウンロード型コンテンツ販売を強化する方向性を示しました。

psp-go

当初、一気にPSP2へとステップアップするかと思われたSCEですが、実際に出てきたのは露骨に携帯電話型ゲーム機(もっと言えばiPod touch)対抗を打ち出したものでした。あれほどまでこだわっていたUMDを取り外し、それに代わり16GBのNANDフラッシュメモリをストレージとして搭載してきました。従来UMDによって流通販売していたコンテンツは、ゲームを含め今後はダウンロード型販売へ大きく舵を切るというのです。

予想されたように、現行ユーザーには非常に不満が高いもので、特にUMDを取り外したことによって以前に購入したタイトルの今後の取り扱いがどうなるのかについて、不安が集中しているように感じました。

当然といえば当然でしょう。PSPタイトルは決して安くは無いのです。たとえば「モンスターハンター ポータブル 2nd G」は、定価5229円、PSP the Bestで3,140円、同様に「勇者のくせになまいきだ。」も定価3,980円、PSP the Bestで2,800円もします。

※この定価自体、AppStoreの価格体系に慣れてしまった方には改めて新鮮な驚きでしょう。なにしろAppStoreでは、Sims3やRealRacingなど大型ゲームタイトルのローンチプライスが1,200円であり、3,000円といえば著名辞典アプリが購入できるレベルです。

実際にUMDパッケージを購入している身にとっては、これらのゲームがPSP後継機でプレイできることを期待するのですが、これに対してSCEは具体的な施策を打ち出せず、「PSP goとPSP-3000は併売する」、または「多くの質問が寄せられている。前向きに検討する」などと、ユーザーを安心させる答えになっておらず準備不足が否めない状況です。

さらに、PSP goの日米の販売開始時期のズレにも焦りが見え隠れします。日本が2009年11月1日販売開始なのに対し、北米では10月1日と1ヶ月も前倒しで販売を開始するのです。SCEは、なぜこれほどまでに焦ってパッケージ販売モデルからダウンロード販売モデルへと、大きな戦略転換を行ってきたのでしょうか。

これは、E3に遅れること1週間、WWDCにて発表された「iPhone 3G S」を睨んだものであることは明らかで、同時にこの9月には発表されるであろう3世代目のiPod touchを強く意識したものであることは間違いありません。

※しかもAppleは当初7月からと予想されていたiPhone 3G Sを、北米では6月19日(日本は26日)とかなり早期に販売開始することを発表しています。

容易ではないダウンロード型モデル

さて、今回SCEが打ち出してきたダウンロード型販売モデルは、すでにAppleが登録アプリ本数5万本、10億ダウンロードを達成するなど大成功を収めているわけです。実に簡単に成功したかに見えるのですが、そうではないことが他社の展開を見ればわかります。

nintendo-dsi-shop

SCEは従来からこのモデルに対応したストア「PlayStation Store」をオープンしており、PSPの従来機でも購入が可能となっていました。また、以前任天堂がNintendo DSiに「DSiウェア」機能を搭載することでこのモデルに対応してきたのは記憶に新しいところです。

現在のこれらのストアの状況を確認してみると、DSiウェアには現在無料ゲームが3本、200円の価格帯のアプリが17本、同500円クラスが29本、プレミアムクラスが7本で無料ゲームが3本、有料ゲームが53本で、合計56本となっています。またPlayStation Storeのゲームアーカイブスを数えてみると、6月時点で297本であることがわかります。

前回カウントした時点と比較したものを表にしてみました。

2009年3月 2009年6月 伸び率
AppStore 合計 7,187 11,779 164%
無料 1,800 3,118 173%
有料 5,387 8,661 161%
Dsiウェア 合計 43 56 130%
無料 2 3 150%
有料 41 53 129%
PlayStation Store 有料 282 297 105%

※AppStoreはUSストアでのGameカテゴリーのみを集計。PlayStation Storeのゲームアーカイブスにはざっと見た限り無料タイトルはありませんでした。またDSiウェアの無料タイトルはすべて任天堂タイトルです。

相変わらずアプリ市場としてのAppStoreの伸張振りが目立ちます。DSiウェアタイトルがかろうじて伸び率自体は高めですが、いかんせんタイトル数が少なすぎます。それ以上にDSiウェアの苦しさは、ファーストパーティである任天堂自製タイトルの多さに現れているといえます。

なぜタイトル数が増えないばかりか、無料アプリや無料ゲームがほとんどリリースされないのでしょうか?

アプリ市場への参入障壁

SCEは、PSP goの発表とほぼ同時期である6月3日に開発環境価格改定のプレスリリースを出しています。

そこには、「ソフトウェア制作におけるライセンス契約から販売までのプロセスを通常より簡素化、幅広い開発者の皆様がより自由な発想をもってコンテンツを制作できる環境を年内に構築し、世界中で加速度的に増加するPlayStationNetworkユーザーの皆様が手軽に遊べるPSP向けダウンロード専用タイトルを積極的に販売してまいります」と書かれています。

どこかで見たようなメッセージですね。そうです。これはAppleがiPhone Developer Programを通じて広く世界中のデベロッパーに対して、格安の料金(年間99ドル)で自由な発想によるアプリ開発を促しているのとまったく同じものです。

またiPhone Developer Programに倣ったのか、従来高価だった開発環境の大幅な値下げも打ち出しています。開発ツールDTP-T2000(A)は、50万円から15万円へと劇的に値下げし、同時にテストツール15万円から10万円へと値下げしています。

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しかし、個人開発者がSCEのサイトを探してみても開発関係の情報はまず見つかりません。なぜなら開発を始めるには、SCEと連絡を取り、書面契約した上で開発キットを購入する手続きが必要なためです。その開発キットも、(情報が非開示なので不明ですが)いままでは上記のセットで済んだとしても50万+15万のセットが必要だったわけです。それを15万+10万に引き下げようが、到底個人デベロッパーや中小規模のデベロッパーが気軽に参加できるものではありません。

※任天堂の場合、開発ツールである「CodeWarrior Development Studio for NINTENDO DS」を取り扱う販売代理店ページの説明によれば、DS用は電話かメールでの問い合わせとなっています。参考までにGAMECUBE向けの製品欄を見ると「本製品は、任天堂株式会社とデベロッパ契約を交し、GAMECUBE開発用ハードウェアを事前に購入された法人の方のみに販売いたします。」となっています。またGAMECUBE版で50万円前後するという噂があります。

いわゆるマジコンなどベンダー非公認のツールを使っての独自アプリ開発手段は存在します。しかし当然ながら限定されたマシンへのインストールのみであり、決済手段なども持っていないためいわば趣味の範疇を超えることはありません。プラットフォームとしては、ユーザー全体が広く利用可能である公式のアプリマーケットへのリリース権限を持つことが重要です。それは、あるデベロッパーが自作ゲームのPlayStation Storeへのリリースを求めて座り込みデモを行っていたことでもわかるでしょう。

アプリ市場への参入障壁以外の何者でもないのですが、SCEや任天堂にはそれを開放する気などさらさらないのです。

これは、Apple社がiPhoneページ(http://www.apple.com/jp/iphone/)トップに開発ツール(SDK)と開発コミュニティへの参加を呼びかけるAppleとは大きな違いです。この節のタイトルにコミュニティと書きましたが、PSP向けの開発コミュニティはその言葉面から想像できるようなものではなく、非常に閉鎖的な、プロプライエタリな香りが漂っています。任天堂についてもほぼ同等のものであることが容易に想像して頂けるでしょう。

またこのような閉鎖性を持ち、かつ参入障壁が高い市場では、リリースされるコンテンツはどうしてもコストをかけたものとなるため本数が少なくなり、無料アプリなど到底リリースされるわけが無いこともまた理解して頂けるでしょう。

※過去に、粗製タイトル乱造により起こったとされる「ATARIショック」を恐れた任天堂が、デベロッパー単位に年間パッケージ数を限定して絞り込ませていた時期があります。その慣習が今も暗黙のうちに続いているのかもしれません。

多様であることの重要性

いうまでもなく、AppStoreの成功はデベロッパーの法人や個人の区別なく、また規模や資金、開発経験や実績、ベンダーであるAppleとのつきあいの濃さなどに一切関係なく、全世界の開発者に対してオープンにしている点にあるといっていいでしょう。

※実際、ゲームコンテンツで最初の成功者となったTrismのSteave Demeter氏やiShootのEthan Nicholas氏をはじめとして、AppStoreでは専業のソフトウェア会社よりも個人規模の開発者が目立ちます。

当然ながら、WWDCで新型機や新APIの利用アプリとして、事前情報を入手し、デモを許される一部の企業は存在します。しかしそれとて実機ではなく、また発表イベントで説得力を増すための実動アプリデモも、熾烈を極めるハードウェア競争においては必要でしょう。

このアプリ市場参入への障壁の低さが、有料無料をとりまぜ、かつ50,000本を超える多種多様なアプリをデベロッパーにリリースさせる原動力となっているのは否定できません。

AppStoreでは、日々その自由な発想に驚かされるアプリが多数リリースされています。バックグラウンド稼動が許されないなどの制限を受けながらも、ネイティブアプリに開放されたデバイスをうまく使いこなし、法人デベロッパーには思いもよらない利用方法で新しい遊び方を編み出し続けています。過去のやりかたの踏襲では上手く立ち行かなくなってしまったこの現在においては、多様性を容認し、その中から浮かび上がる可能性にかけるほうがむしろ効率がよくなりつつあるということでしょう。

確かに、長年のつきあいがあり開発経験を有するデベロッパーの組織化は、事業計画面でのコンテンツリリースの確実性(投資回収の確実性)という点においては有効性を発揮するでしょうが、「組織も人も、特殊化の果てにあるのは、緩やかな死」でしかありません。それは近年のヒットタイトルにシリーズ物が占める率にも如実に現れています。多様な立場の多様な経験を持つ開発者達が、果敢にチャレンジし続けることでしか今までにない可能性は生まれてこないとも考えます。

※当然ながら、開発者個人の安定収入確保を無視しているわけではありません。しかしながら、少なくとも日本では職業選択の自由があります。生まれながらに出身地や身分で開発者という職業を義務付けられた人間はいないでしょう。開発者という職業は自由意志で選ぶことが可能な上、既存大手法人に所属するか個人事業で行うかの選択の余地があります。

ダウンロードの習慣化

もちろん、AppStoreの成功は単に参入障壁の低さによるデベロッパーの多様性によるものだけではありません。開発コストの低さ、AppStoreのマージン率の低さやアップデートの容易さ、価格設定の自由度の高さなどに加え、ダウンロードおよびインストール手順の容易さが重要であることはいうまでもありません。

1billion

上で各アプリ市場のタイトル数を比較しましたが、当然ながらタイトル数だけが問題なのではありません。以前も指摘したように、それらのアプリやゲームが市場に並ぶだけではなく、実際にダウンロードされるかどうかが問題なのです。AppStoreは、ご存知のように10億ダウンロードを達成していますが、任天堂はこのダウンロード数を公表しておらず、SCEは映像コンテンツなどとあわせた全体の数値(Appleで言えばiTunesStoreとAppStoreの合算に相当するもの)でしか発表していません。

ただし、PSP go発表時のユーザーコミュニティの反応にみるまでもなく、従来のゲームプラットフォームを利用するユーザーはパッケージ所有に対するこだわりを捨てきれないでいます。また任天堂においてはユーザー層の偏りから、それ以前のネットワーク接続という壁に悩まされ続けています。

※以前の記事で書いたとおり、任天堂は2010年3月末までに「DSiショップに接続するだけ」で1,000DSiポイントがプレゼントされるキャンペーンを行っています。DSiショップに接続するだけで、DSiウェアが2~3本は購入できるということです。習慣化のためにはこういった施策が必要だったということでしょう。

Appleは、この点においても大きなアドバンテージを持っています。特にiPhoneでは3GネットワークとWi-Fiネットワークを意識することなく切り替えながら利用できるため、特に大都市圏ではほぼ24時間どこにいてもネットワークに接続した状態がキープできるようになっています。3Gでは10MBの容量制限がありますが、ゲーム購入においても場所を選ばず、駅のホームでゲーム購入を行うことすら可能になっています。iPhoneユーザーは、いまや場所や時間を選ぶことなく「欲しい」と思った瞬間に、ゲームやアプリを購入またはダウンロードし、ゲームをプレイし、またはアプリを利用しているはずです。

この積み重ねが、アプリ市場オープン後わずか9ヶ月で達成した10億ダウンロードに現れているということです。もちろんこの習慣化においては、iPodにおけるiTunes利用体験や、気軽に試すことが出来る無料アプリや無料ゲームの存在も大きいでしょう。

恐らくPSPやDSiユーザーには、一部PCを常用する方や生活圏内にWi-Fi環境がある方を除いて、アプリ市場を見たことすらないユーザーも多いのではないでしょうか。ましてやクレジットカード登録などを行い、頻繁にゲーム購入を行っている方となるとさらに少なくなるでしょう。

※PSPの場合には、UMD流通の大容量コンテンツ(最大1.8GB)に慣れたユーザーに対して、それと同規模のゲームコンテンツをダウンロードさせる回線確保も問題になるのではないかと思われます。逆にゲーム専用プラットフォームであるPSPの場合、iPhoneアプリと同程度の軽量コンテンツでは到底満足できないだろうことも容易に想像できます。

デバイス利用の常態化

iPhoneが出た当時、バッテリーの持ちが悪い点がネガティブに報道されたことがありました。しかし現時点において携帯デバイスに採用されるバッテリーにそれほどの差があるわけではなく、標準品では容量が1,000mAh~大きくとも2,000mAhを切るものしか搭載できていません。プロセッサなどの搭載部品の差は存在しますが、バッテリー容量や待機時間は一桁違ってくるようなものではなく、それよりもむしろ利用方法の違いがバッテリー持ち時間にダイレクトに影響しているのだということです。

iPhoneやiPod touchを利用しているユーザーは、ゲームだけをしているわけではなく、スケジューラーやメモ帳、地図アプリや辞典アプリ、ビデオや音楽鑑賞、それにメールやRSSチェック、Webブラウジングなど非常に広範囲にデバイスを利用しています。

しかし、PSPやDSiを考えた場合、ここまで広範囲な利用想定は出来ません。ゲームをプレイする以外では、主にPSPにおいてあらかじめPCでダウンロード後、PSPに転送しておいたビデオを閲覧するという用途がほとんどではないでしょうか。ブラウザを搭載しWebブラウジングが可能といっても、Wi-Fi電波の確保が必要であるため意識してWi-Fiスポットを探す必要があります。その上、もともとがゲーム機であるためにWebブラウジングを快適に行える操作性であるとは到底いうことはできません。なにしろiPhone/iPod touchのブラウジングの快適さは、液晶サイズは置いておくとしてその操作性においてはむしろPCでのブラウジングをはるかに超えるものです。

※iPhone/iPod touch標準搭載のMobile Safariでの操作性が上記であり、AppStoreからダウンロード可能な専用アプリでの快適さはPCを超えるものも多数あり、PSPやDSiに比べるべくもありません。

こうしたiPhone/iPod touchにおける利用の常態化は、AppStoreアイコンへのバッジ表示も手伝って常にアプリ市場をチェックすることにもつながり、それは先ほどのダウンロード習慣化にも繋がってきます。

このように日々、さらに常時利用するものであるからこそ様々なアプリや短時間でもプレイできるゲームが求められ、その市場の要求にしたがって多種多様なアプリやゲームが日々百本以上でリリースされているのです。AppStoreでは、他のプラットフォームでは商売にならないほどのニッチなゲームやアプリでも充分勝負になるということです。

こうしたダウンロードの習慣化やデバイス利用の常態化はアプリ開発からアプリ購入までのサイクルを活性化し、ニッチな部分でも市場の要求にマッチさえすればどんなアプリやゲームにも成功の可能性が与えられています。これは、従来のパッケージ流通市場では到底考えられないことです。リリース本数が限定されるということは、小さいひらめき程度のアイデアはスポイルされる可能性の方が高く、世に出る機会すら与えられることはなかったでしょう。

エコシステムの重要性

あるところで「iモードがエコシステムである」という少し的外れな記述を見たのですが、そこには大きな違いがあることに気づいていないようです。AppStoreのエコシステムは、関係者すべてが一定の利益を得られているところが素晴らしいのであって、だからこそ(現時点で見える範囲では)持続的に成長していけるのであるという要因にもなっています。単にどこかにお金を回収するだけの仕組み(事業モデル)ではないのです。

iPhone利用者にとっては、無料のアプリやゲームから大手デベロッパーによるゲームコンテンツや辞典アプリなど多種多様な選択肢が与えられ、アプリを購入・ダウンロードすることで一人ひとり別々の、またその時々で変化するニーズに沿ったカスタマイズを行うことができます。ガワだけが違う新機種が出ることもなく、わざわざ新機種に買い換える必要もありません。ニーズの変化はアプリの入れ替えで対応できるだけでなく、年数回行われる(バグフィックスパッチに留まらない)アップデートにより、常に最新機種を使い続けているのと同じ気分を味わうことが出来ます。結果的に、iPhone利用者の満足度は当たり前のように非常に高いものとなります。

またデベロッパーは、これまで参入しようとしても出来なかった市場に自らの作品を世に問うという貴重な機会を得ることができる上、日本国内だけではなく世界市場に対してその是非を問うこともなんの隔たりもなく実行することが出来ます。従来、商習慣や法体系の異なる海外市場で事業展開することがどれほど大変であったかを考えれば、IDPに登録しAppStoreの世界共通の仕組みを通じてアプリやゲームを発表しさえすれば、ダウンロードインフラや決済手段の提供まで統一して行ってくれる仕組みは他にはありませんでした。その上、一部のマニアだけではなく、スマートフォンに見向きもしなかった女性までもが購入し、さらには子供、高齢の方でも使いこなすことが出来るUIを持つiPhoneでは、他のプラットフォームや今後出てくるアプリ市場でもリーチしえないところにまで自らの作品を届けることが可能です。それはついに4千万台にまで到達した統一されたフォームファクタによって強く支えされるのです。※新型機iPhone 3G Sでも、むしろ頑ななほどオリジナルiPhoneと同形状同サイズになっています。

さらにはApple自身も、自律的に回転する市場を管理・運営することにより自動的に3割のマージンを得ることができ、それによってられた資金は従来機すらカバーするOSアップデートに対するR&Dへと振り分けることが出来ます。Appleの従来機を見捨てることなくサポートし続ける姿勢や、一度決定したデザインを貫き大事に使い続ける姿勢は、従来機を使い続けるユーザーにも継続して利用することへの安心感と満足感を与えることになり、4千万台という数字が実質的な意味を持ってきます。これはiモードが4,000万または5,000万という数字を達成しようとも、過去の端末ユーザーを切り捨てる姿勢をとってきたこととは全く逆の方向性です。

実際のところ、こうした姿勢やプラットフォームの特性はデベロッパーこそが一番理解しており、今年のゲームデベロッパーカンファレンスなどではiPhoneやAppStore関係のセミナーが花盛りであったことにも見ることが出来ます。また先日行われたWWDC 2009のチケットが比較的高額にも関わらず昨年の2倍の速度で売り切れたことにも、デベロッパーのiPhoneに対する並々ならぬ興味のほどをうかがい知ることが出来ます。

またiPhoneに触れたことがきっかけでMacを購入するユーザーや、さらにはアプリ開発をはじめたユーザーも多数見かけることからも、いかにこのAppleの作り上げたエコシステムが魅力的かつ健全で、持続的に成長可能であるかを示していると考えます。iモードをはじめとして、世界規模のプラットフォームにおいて過去こうした現象があったでしょうか。

単にはやっているからという事ではなく、Apple社の姿勢や深く検討された魅力的なデザインやUI、それに魅了された数多くのユーザー。世界中のユーザーが集まる4千万という巨大な市場で、また統一されたフォームファクタで勝負する機会を与えられたデベロッパー。すべてが無理な我慢を強いられることなくこれまでに無いメリットを享受していることがわかります。

AppStoreには、自律的かつ持続的に発展していくエコシステムというものが、充分すぎるほど検討されしっかりと構築されていることが理解できます。

※ここには、胴元がビジネスモデルにまで口を挟み、膨大な過去モデルの互換性検証まで手弁当で背負わされたiモードアプリ開発とは決定的な違いがあることがお分かりいただけるかと思います。さらに重要なことは、ここ1年の携帯販売台数低迷に明らかなように、こうした既存顧客を切り捨てる戦略がすでに破綻しつつあるということです。デベロッパーどころか端末機器メーカーすら撤退するという異常事態がどうして起こってしまったのかについて、きちんと目を向ける必要があるでしょう。

ケータイアプリ会社を知っている方ならば、壁一面にずらりとならんだ各社の現在~過去モデルの検証用端末の多さにビックリしたことがあるかと思います。また弱小デベロッパーではそのような検証用端末を自前で用意することが出来ないため、キャリアの用意した検証センターを時間単位で料金を支払ってレンタルし検証しているのです。またサポート電話窓口の設置なども義務付けられているため、個人レベルはもちろん、数名程度の法人ですら生半には参入できない市場であることは明らかです。また年数回華やかにデビューする新機種の裏側で、旧機種を使い続けるユーザーがどのような思いを持っていたかを考えれば、隔世の感があるのは私だけでは無いかと思います。

プラットフォームの市場規模

先日のWWDCにおいて、iPhoneおよびiPod touchを含めたプラットフォームとしての出荷台数は4,000万台であることが発表されています。iPhone 3G発売後、1,000万台突破時点の記事を書いてからまだ1年も経っていないというのが驚きです。

ちなみに現時点でのワールドワイドでの各ゲームプラットフォーム出荷台数は次のようになっています。

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※画像はwww.vgchartz.comより。

左半分がいわゆる据え置き型のコンソール機、右側2つが携帯型ゲーム機になります。王者Nintendo DS(iを含む)は世界で1億台突破、そしてPSPシリーズは4,800万台となっています。つまり、規模としてはiPhone/iPod touchは携帯ゲーム機であるPSPと同オーダーに並びつつあるということです。

※メーカー発表数値と異なります。

伸び率を考えると、iPhone/iPod touchは来年にはPSPシリーズの台数を超える可能性もあるのではないかと思われます。この数値の伸びについては、上で指摘したようにこれらゲームプラットフォームがゲーム専用機であり、実態として限定された用途にしか用を為さないのに対して、iPhone/iPod touchが多様なアプリを持ち、またWebブラウジングやメールなどの用途では充分以上に利用できるという大きな違いがあると考えます。

その上、この数値はあくまで世界市場におけるものであり、各国市場への参入は自社または現地法人との提携により行うほかない国内デベロッパーにとっては、自然と国内販売台数だけが重要になってきます。ちなみに日本国内に限定したグラフを見てみましょう。

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まったく違うグラフになってしまいました。Nintendo DSは2,700万台(全体の27%、以下同じ)、またPSPは1,200万台(26%)でしかありません。結果的に、世界展開する体力の無いデベロッパーにとっては、この台数が全体のパイとなり、ここからどれくらいのユーザーに購入してもらうかが勝負となってきます。

※ちなみにPSPは北米市場で1,687万台(35%)、EU圏内では1,899万台(39%)となっており、DSも北米3,538万台(34%)、EU圏内4,195万台(40%)となっておりほぼ同じ販売傾向が読み取れます。

またPSPの売上を底上げしたとまで言われたモンスターハンターポータブル2nd Gも、国内330万本というオーダーであり、PSPユーザーの約3割が購入したと考えれば、国内市場ではほぼこれが限界数値となってくるということです。世界一売れたゲームであるスーパーマリオブラザーズも世界で4,000万本、国内では680万本であることから世界市場規模の大切さがわかります。

また世界展開できるデベロッパーにとっても事態はあまり変わらず、本数自体は伸びますが現地法人維持コストや在庫管理コスト、また提携条件によってはマージンが非常に低いものとなり、自社展開するにしろ長期出張従業員の精神的負担や商習慣変動、さらには為替レート変動などのリスクを検討すれば世界展開はそれほどおいしい市場には見えません。

国内では100万台未達であると指摘されるiPhoneですが、そこにはiPod touchの数値は合算されておらず、また先ほど見たようにAppStoreにおいては世界市場への参入障壁や特殊なマージンなどもなければ、デベロッパーが上で述べたようなリスクを負担することもありません。

※もちろん国や言語が違う以上、負担ゼロというわけにはいきませんが、上記ゲームプラットフォームでの負担と比較してみればその負担の少なさが理解できるかと思います。

しかも先に述べたように利用が常態化しているデバイスとしては、携帯ゲーム機以上の稼働率があるということです。広く門戸を開いた結果SDKダウンロードが100万件を突破し、リリースアプリ本数が50,000本を超え、それがAppStoreオープン後わずか9ヶ月での10億ダウンロード達成の原動力となっているのです。

こうしたデベロッパーへの負担軽減や世界展開サポート、さらにはユーザーの利用率向上などを行うための必須施策が最初に述べたパッケージ販売からダウンロード販売への転換であるのです。しかしそれは決して容易な道のりで無いこともすでに述べました。

iPhone 3G Sという武器

先日のWWDCにおいて、Appleは次世代機「iPhone 3G S」を発表しました。

外見上は従来のiPhoneシリーズと寸分たがわず変化がなく、「速度が最大2倍」としか表現されなかったためにむしろ電子コンパス搭載やビデオ撮影機能、バッテリー持続時間の延長などに耳目が集まりました。

しかし、徐々に明らかにされた内部の大きな変化により、Appleが次に狙う市場が明確になりつつあります。

CPUやGPUの強化により、スマートフォン市場でのライバルであるPalm Preを迎撃するばかりか、ゲームプラットフォームすら競合対象として捉えようとしていることが明白になってきたのです。

特にGPU強化では、昨年8月に発表されたばかりのOpneGL ES2.0対応のPowerVR SGXコアを搭載し、携帯デバイスとしては非常に贅沢なプログラマブルシェーダーをサポートしました。ピクセル・シェーダーやバーテックス・シェーダーにより、ゲームに登場する3Dオブジェクトの変形や移動、さらにはオブジェクト表面の光源処理や陰影処理、質感処理などが可能となります。端的に言えばリアルな表現の3Dゲームが開発可能であるということになります。※PCで言えばDirectX 8.0世代に相当。

参考)iPhone 3G Sは、Cortex A8プロセッサとPowerVR SGXGPUを搭載か

もちろん、現行PSPでもピクセルシェーダーは非対応ですし、据え置き型ゲーム機であるWiiですら搭載していません。むしろPowerVR SGXコアは、次世代PSP(PSP 2)に搭載されるのではないかと噂されていたものだったのです。

※PSP 2には、iPhone 3G Sに搭載されているというPowerVR SGX 520の上位モデルであるPowerVR SGX 550が搭載されると見られています。

それほどのグラフィックスコアをライバルに先駆けて搭載し、さらにそれをこの6月に市場に投入するという素早さは、競合企業にとっては特にゲームプラットフォームにとっては大変な脅威になることは想像に難くありません。

SCEは、PSP 2登場までの繋ぎの役割をするPSP goを10月1日に投入しますが、Appleの例年の動きを見れば、恐らくそれよりも早く9月初旬にはiPhone 3G Sと同機能、またはそれ以上にクロック周波数を開放された次期iPod touchが投入されるはずです。これがPSP go(定価2万6800円)どころか次のPSP 2への大きなプレッシャーとなり、それは端末コスト上昇要因に繋がるでしょう。

かたやAppleは、上で見たように持続的成長が可能なAppStoreエコシステム構築をすでに完了しており、今回のiPhone 3G Sにおいても端末自体でコスト回収可能でありながら、AppStoreや(噂では)キャリアからの通信料キックバックも得ておりまったく無理がありません。

また新型ゲームプラットフォームでは、アーキテクチャの変更を伴うことからデベロッパーへの参入を促すための努力も怠るわけには行かなくなり、そのコスト回収のためにも開発キットの大幅な価格ダウンは行えません。先に見たAppStore(iPhone Developer Program)への参入障壁の低さと比べることで彼我の差が明確になります。AppStoreにおいては、デベロッパーはいきなりメジャータイトルで勝負することなく、無料や115円という低価格帯向けのアプリやゲームから臆することなく着手することが出来ます。

昨年、1千万台突破時にゲームプラットフォームとしての立ち位置を書いたところ、所詮ゲーム機では無いとの指摘も受けました。しかし今回のiPhone 3G Sの投入により、ゲームプラットフォームの苦境はかなり明らかになっており、また何よりエコシステムの健全さで裏打ちされた成長力により、今後の状況はかなり大きく変化するのではないかと考えます。


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