
Rolandoのバージョン1.6がサブミットされたということです。
iPhoneの代表的ゲームといわれるRolandoですが、なぜ代表的といわれるのかを考えてみると共に、再度AppStoreの傾向と対策を考えて見ましょう。 Rolandoは、開発元handcircus社、AppStoreでのパブリッシャーはngmoco:)社によりリリースされています。
傾きセンサーやタッチインターフェースを生かしたパズルアクションとなっており、幅広い年代に受け入れられる簡単なルールとゲーム性を有しています。 これらの要素をみても、iPhoneの特性を活かしたゲームであることがわかるのですが、ほかにも見逃せない点があるのです。
パブリッシャー
まずパブリッシャーに注目してみましょう。パブリッシャーのngmoco:)は、元EAのニール・ヤングが設立した会社です。
ニールはゲーム業界では非常に有名で、セガアメリカ(Sega of America)やVirgin Interactiveを渡り歩いた後、米国を代表するパブリッシャーElectronic Artsに入社しています。EAでは、Ultima OnlineやThe Lord of the Rings、Medal of Honor、SIMS2などを手がけており、EAのロサンゼルススタジオを取り仕切っていた人物でもあります。
そんな人物に、すでに世界を代表するパブリッシャーと育っていたEAを退社し、独立という選択をさせたのはiPhone 3Gの登場だったのです。ニールは、据え置き型プラットフォームへの限界を感じると共に、携帯型ゲーム機の中でもiPhoneというプラットフォームにゲーム業界の未来を見ることが出来たのです。
※もちろん、いろいろ手がけた割にはセールスが芳しくなく、社内的な立場が苦しかったという事情もあるでしょう。
そのngmoco:)がはじめて大きく事前プロモーションを展開しリリースしたRolandoは、ニール・ヤングの影響力と共にコミュニティに対しておおきな反響をもたらしました。
もちろんRolando自体魅力あふれるゲームなのですが、当初handcircusから発表された頃に比べ、ngmoco:)からパブリッシュされたことにより多数のユーザーの目にとまり、その幅が広がったことは事実でしょう。
継続的なアップデート
AppStoreでのレビューをみていると、多数のユーザーが継続的なアップデートを望んでいることがわかります。
デベロッパーとしては、ただでさえ平均単価の低いAppStoreにおいて継続的なアップデートを行うことはさらなる負荷になるのですが、逆に考えると大規模なアップデートではなく細やかな修正や機能アップを行うことで固定的なファン層をつかむことが出来るわけです。

Rolandoではどうでしょうか?Rolando(1.0)がリリースされるや各国ストアのチャート上位を占め、iPhoneでも1・2を争う代表的なゲームとなったのですが、その後Rolando2、3の予告と、さらに従来バージョンであるRolando(1.0)の継続的なアップデート計画があわせて発表され、操作性修正などに留まらずステージの追加などが順次行われることが発表されています。
こうした情報はTouchArcadeのForum等でも取り上げられ、iPhoneコミュニティ内で定評を得ながらも、さらに継続的なファン層広がりを促す仕掛けとして機能していることがわかります。
また、同様の仕掛けを行っているタイトルとして、Zen Boundが上げられるでしょう。こちらもステージ追加が行われることで、再度メディアなどで大きく取り上げられました。こうしたアップデート計画の事前発表と細やかなアップデートにより、iPhoneユーザーはそのデベロッパーの製品を選んでよかったと思い、さらにはそのデベロッパー(パブリッシャー)に対する親近感を感じることもできるのです。
Rolandoは、パブリッシャーによる長期的な製品計画や従来製品もおろそかにしないアップデート計画の発表により、ファン層に安心感を与えると共に、新しいバージョンの評価ほど高くなるといった現象を見せています。
ただでさえ平均単価の低いAppStoreでは、(言葉は悪いですが)高く売り逃げた上で新規製品を次々と作り販売したほうが儲かるのではないか?という声も聞こえてきそうですが、むしろiPhoneというユーザーレビューが成熟した市場においては一度ユーザーを裏切ったパブリッシャーの製品は二度と購入される機会を失うでしょう。逆に持続的なアップデートを行い、既存ユーザーの満足度向上を図り、固定ファン層を作ることこそが重要だと考えます。
Rolandoで長期的にアップデートを行った実績はユーザーの信頼を勝ち得ることに成功し、ngmoco:)のパブリッシュするゲームに対する信頼は今後も容易に崩れることはないでしょう。
すでに4千万のオーダーに達しようとしているiPhoneAppStore市場は非常に巨大であり、次々と新製品を開発しリリースするよりも、市場内での購入率を上げる施策を採ったほうがコスト回収的にも有利であることが理解して頂けるのではないかと思います。それは後で述べるiPhoneとAppStoreの特徴にも関係します。
Rolandoは、iPhoneの機能を活かして面白いゲームに仕上げるだけでなくこうした施策をきっちりと行うことにより、総体として高い評価をユーザーから獲得することに成功しているのです。
もちろん、Rolandoはパズルアクションというジャンルであり、ゲーム性に注目すれば他のゲームを挙げるユーザーもいるでしょう。しかし、同様にアップデートを継続的に行っているTapTapシリーズなども長期的にユーザーの満足度を獲得し、iPhoneの代表的なゲームとして紹介されうる資格を持ちえたのだと考えます。
これは、デベロッパーやパブリッシャーの方よりも、むしろiPhoneのユーザーにこそ同感していただけるのではないかと考えています。
iPhoneは発表時こそ評価が高かったのですが、販売開始されるや否や、スマートフォン特有のとっつきにくさや日本語入力でのもたつきなどから一気に大手メディアからバッシングを浴びることとなったのは、初期からのiPhone 3Gオーナーには記憶に新しいところでしょう。2008年9月の段階で「戦後処理も必要な段階」とまで書いてみせたメディアやアナリストの名前を記憶しているユーザーも多いでしょう。
しかし、そこからが今までの売り切りのケータイとはまったく異なったのです。

Apple社が持続的なアップデートを行い続け、またソフトバンク社の頑張りもあり、iPhoneは変化し続けました。
その結果、購入者の満足度が非常に高い携帯電話機となり、発売から1年が経とうとするにも関わらずいまだに携帯販売ランキング上位をキープしています。
しかも単にハードウェアが売れているだけではなく、Webブラウジングのシェアなどに現れているように、所有者が日々使い続けているなど今までのケータイとはまったく異なる展開を見せています。
※もちろん、ソフトバンクが行っている販売施策によるところも大きいでしょう。すでに本体価格は実質ゼロ円となっており、”iPhoneは高い”といわれ続けたことがウソのようです。むしろiPhoneが安いことは、docomoからAndroidケータイの料金プランが発表されたことでも明らかになりました。しかし、それらを差し引いてもパケット料金などを考えるとまだまだ高価な買い物であることを考慮すれば、発売から1年後にこれほど高い満足度で売れ続けているケータイはまれであることは確かでしょう。
Andoroidはまったく別の展開になりつつあることはほぼ明らかではないかと思っています。各キャリアでバラバラなフォームファクタで発売されるAndroidは、アプリリリースも各キャリアや機種固有のものとなってしまい、一般利用者が安心して使える端末にはなりえません(すでにHVGA以外のQVGAディスプレイ端末が登場予定です)。ごくごく一部のOSリプレースやアプリ開発までも自分で行えるつわものには非常に魅力ある端末であることは否定しませんが、これでは一般ユーザーを幅広く獲得し、ましてや満足度を得るところにまでいたるには相当の紆余曲折が必要ではないかと考えています。
またiPhoneは、夏には行われるであろうiPhone 3.0によりさらに進化を遂げることが約束されており、もし噂どおりWWDC(または以降の発表会)で次期iPhoneが発表されたとしても、各種割引が行われる前に購入した初期所有者ですら、元がとれただけではなく、この1年充分すぎるほどiPhoneを楽しんだという実感をもっているはずです。
さて、通常の販売方法では難しいことがわかったところで、再度AppStoreの傾向をチェックしてみましょう。
AppStoreの傾向
パッケージ流通の市場とは異なり、また大手媒体への宣伝広告活動で完結していた市場とは違い、AppStoreはユーザーによるレビューと在庫を持たないダウンロード形式の販売であるという大きな利点があります。 特に国内メーカーの場合には一度リリースするとアップデートもせず放置することが多く、たいていの場合、AppStoreレビューの評価は日を経るにしたがって下がっていく傾向が見られます。
またそのようなゲームは、価格もリリース当初のままで据え置かれることが多く非常にモッタイナイ気がしているのは私だけでは無いでしょう。 これは競合製品の登場などによりゲームの評価が変動していることや、競合製品も日々価格を変動させているために相対的に該当ゲームへの評価が変動していることを示していると考えます。
AppStoreでの平均単価の低さから大作コンテンツが出づらい状況となっており、現時点ではむしろ操作性などが左右することが大きいためだと考えます。これを打破するには細やかなアップデートを行うことが必要でしょう。
※ここは3.0の登場と共にスタートするIn App Purchaseや、噂されているプレミアストアの開放により傾向が変化する可能性があるでしょう。
またAppStoreの改善により、現在はバージョンごとのレビューが表示されるようになっています。AppStoreレビューも、注意深く見れば購入直後の書き残しだけではなく、アップデート直後にも細かく評価をしているユーザーの多いことに気づくはずです。一度購入すれば終わるのではなく、その後も日々ゲームやアプリを使っている様子や、さらにアップデート内容についても注目している様子が伺えます。
AppStoreレビューの力
AppStoreにおいては、販売スペースの問題も存在しません。ここでは売り場スペースは無限にあり、検索さえすればいつでもダウンロード購入が可能です。
パブリッシャーはどうしてもトップ10などに目が行くようですが、アプリを見ていればリリース時にはトップ10入りを獲得できなかったアプリが、後にランクインしていることに気がつきます。まれに見るヒット作となったiShootなどもその例に漏れません。 従来の販売スペース問題があれば、こんな現象は非常にまれで起こりづらいことは自明です。
この原因としては、AppStoreのレビュー機能や、各種コミュニティの力が大きいでしょう。 分野は異なりますが、Amazonでは製品のファン層が製品についてレビューを行う制度があり、特に米国ストア(Amazon.com)では異常な数のレビューがついています。製品を購入したユーザーが、自分視点で製品のよいところや悪い点、競合製品と比較して選択するにいたったポイントなどを事細かにレビューしており、それを見たユーザーがレビュー自体を評価しながら製品購入の決め手としており、まさにレビューコミュニティが機能しています。こうして製品のファンになったユーザーは自ら対価を要求することもなく製品をアピールしてくれ、次にその会社のファンとなり、プロモーションをするまでもなく次の製品を待ちわびるのです。
※AmazonレビューはAppStoreレビューと同様に無償で行われ、レビュワーへの直接的なキックバック制度はありません。
※Amazonと異なりロングテール理論が通用しないという指摘が一部であるようですが、それを補うのも持続的なアップデートによる固定的なファン層獲得ではないかと考えます。アップデート計画を示したりブログ等で近況を報告することで、購入者以外の目に入る機会も増加するでしょうし、また購入予定者が目にするであろうAppStoreにおいて高いレビューを獲得する機会も増えるのではないでしょうか。
iPhoneの場合Webコミュニティが成熟した時点で誕生していますので、AppStoreレビューとあわせ、このコミュニティの影響力が非常に強くでる傾向となっています。別エントリーで指摘したように、AppStoreがオープン1年未満で登録アプリ本数が4万5千を超えるという異常な事態になってもアタリショックが起こらず、むしろ(ユーザーから見た)良質アプリが正しく評価される傾向がきちんと維持されています。
大手メディアへの宣伝活動やサクラレビューがまったく無意味なのも特徴的でしょう。ブログ等で煽ったところで、ユーザーは自分自身で判断する力を身に付けており、適切な情報開示(バグへの対処や、アップデート計画など)を行うことこそが重要になりつつあります。恥ずかしながら当ブログも同様です。
今後のアプリリリースのあるべき姿
あくまで私見に過ぎませんが、何点かあげてみます。
- 価格変更を上手に使うこと
AppStoreにおいて、ゲーム(アプリ)価値は日々変動します。 これはパッケージ流通市場でも厳然としてあったのですが、一度リリースしたものの価格変更は物流や卸販売制度という縛りもあり不可能であったのです。しかし、AppStoreではアプリ価格変更の権利は(審査を経るとはいえ)デベロッパーの手にゆだねられています。これを活かさない手は無いでしょう。 - ホーム画面の上位画面を獲得すること
iPhoneユーザーにとって、アプリは日々使うものです。画面をフリックしてアプリを検索する手間やホーム画面の入れ替えを行う手間の方が大きいため、ホーム画面の1画面目2画面目を獲得したアプリはなかなかそこから変動しないのも理解できるかと思います。 またユーザーは(よほど覚えやすくて単純なもので無い限り)アプリ名よりもアイコンで覚えている場合が大半です。これには初期バージョンでユーザーの心を掴むだけの機能やゲーム性を持つだけでなく、魅力的で直感的なアイコンデザインなども必要でしょう。 - 持続的なアップデート計画を示すこと
以前、別エントリーでデベロッパーが開発経緯などを語る重要性について指摘しましたが、これをもっとも強くアピールできるのが細かな近況報告や将来にわたるアップデート計画でしょう。近況報告やアップデート計画を見ることにより、各ユーザーは開発者と共に歩んでいる感覚を得ることができ、むしろ欠点を補う使い方さえしてくれるものです。これは上で述べたiPhone本体と同じことです。
もう少し書いてみましょう。
1で比較的上手く作用していると思われる手法は、オープニングセール方式です。リリース直後の価格を定価より低く抑えることで、リリース前後に注目してくれた感度の高いユーザーに対する購入インセンティブを与えます。そのユーザーのレビューが載りその評価が高かった場合には、そのレビューでの評価を元に購入する慎重なユーザーにも波及していく段階となります。ここで、定価への変更を行いコスト回収を加速させます。
これを逆に定価からの値下げで考えて見ましょう。当初定価で購入したユーザーは、AppStoreレビューやブログ等で評価をするにつれユーザーが増えるのを感じます。その後にアップデートもなくアプリ価格が下落していくのを見ると、「先に買って損をした。値下げを待てばよかった。」という感覚を持つでしょう。この感覚を抱いたユーザーは、二度と定価で買わないのは明らかです。やはりこの順序は逆であってはならないのです。もちろん発売当初こそ価値が最大であるという考え方もあるでしょう。しかしそれは、AppStoreの特性をもう一度考えてみれば少し違っていることに気が付くと思います。
2は、それ以上に重要でしょう。iPhoneではカートリッジ入れ替え型の従来のゲームプラットフォームと異なり、少しの空き時間にパッケージ入れ替えの手間などなしに多数のゲームやアプリを切り替えて楽しむことが可能です。 電車や信号の待ち時間ですらメールチェックだけではなくさまざまなゲームがプレイできるわけです。一度遊んだゲームだからといって、すぐに手放したり中古ショップへ流せはしません。iPhoneアプリの場合、一度登録されたアプリが削除される機会は、iPhoneのホーム画面上の制限(9画面、144個)によるものしかありません(もちろんホーム画面に残す価値すら無い場合は削除されることもあるでしょう)。Spotlight検索の利便性も、ホーム画面3画面目くらいまでのアプリではフリック操作での起動に負けてしまうでしょう。
3はこのエントリーで一番強調したい点です。先に述べたように、AppStoreでは日々競合アプリがリリースされ、昨日の優位点は今日は 当然の機能に陥ることもしばしばです。これはアップデートで補うほかなく、むしろアプリ自体が持つ将来への発展可能性と、アップデートにより改善される機能の方が重要であるとさえいえるのではないかと思います。気に入ってもらった上でホーム画面上位を勝ち取るには、そのアプリを使い続けることへの安心感を与えることが必要です。ゲームであれば、それはステージの追加などに当たるでしょう。 一度遊んだゲームに対して別の遊び方が提案できれば最適でしょう。
iPhoneユーザーは、変化し続けることのほうが大事だということを身をもって体感しています。
それと同様、ユーザーに対して持続的な改善を訴えかけることの重要性は理解頂けると思います。
繰り返しになりますが、最後にウィズダム英和和英辞典を例に挙げてみましょう。
元々定評のあったアプリですが、今回のアップデートにより従来からの利用者はこのアプリを使い続けることに対する深い満足感を得たと考えます。単にコンテンツの見直しにとどまらず、大辞林で確立した素晴らしいUIをウィズダムへと還元することにより、英和和英辞典アプリとしては飛びぬけた操作性を手に入れました。
このアプリも大辞林と同様のiPhoneらしいUIを実装すると共に、AppStoreの特性を活かした方法で成長を遂げました。開発/発売元である物書堂さまは、エルゴソフト以来のファンであるMacユーザーからの信頼を上回る、コアなファンユーザーをiPhoneのAppStoreで手に入れたのではないかと考えます。



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