日経配下のIT系専門メディア「ITPro」の年末特集で各記事アクセスランキングが発表されています。
特に「ネットワーク」ジャンルでは、年間アクセス上位20位以内にiPhone関連記事が11本も入るという注目ぶりです。
孫社長の2008年6月当時の示唆に富む発言もありました。
ITProのアクセスランキングは、[ITpro総合]、[情報システム]、[マネジメント]、[Development]、[ITpro SkillUP]、[Windows]、[プラットフォーム]、[オープンソース/Linux]、[セキュリティ]、[ネットワーク]の各ジャンルに分かれています。
要するに、いわゆるシステムインテグレータなど(数十人~数百人規模の)組織的なソフトウェア開発に携わる方が良く見るサイトであり、AppStoreの仕組み上、これらの開発者が業務上関係することはほぼないわけです。
※ただし、先日リリース「ガチな業務アプリがリリースされたようです」があったようにハンドヘルド端末的にiPhoneを使い、業務アプリを搭載するパターンも今後増えていくのではないでしょうか。
このうち総合で見ると20位以内には7位に「“未熟な傑作マシン”だった「iPhone」,使ってみて初めて分かった実像」、8位「【iPhone 3G】実機を入手、その使い勝手はいかに?(その1)」、17位「【iPhone速報】一部店舗でトラブルも,「1台も売らない」でソフトバンク恵比寿は一時騒然」にそれぞれランクインしています。
7位の気になるタイトルは、初代iPhone(GSM機、日本未発売)のことを言っており、以下8位17位は発売直後の話題性の高い時期の記事だとわかります。
その次にネットワークカテゴリを見ると、冒頭で書いたとおり1位「“未熟な傑作マシン”だった「iPhone」,使ってみて初めて分かった実像」、2位「【iPhone 3G】実機を入手、その使い勝手はいかに?(その1)」、3位「【iPhone速報】一部店舗でトラブルも,「1台も売らない」でソフトバンク恵比寿は一時騒然」、4位「【iPhone 3G】実機を入手、その使い勝手はいかに?(その2)」、5位「【iPhone 3G】実機を入手、その使い勝手はいかに?(その3)」と上位を独占し、その後も7位「NTTドコモ中村社長,iPhone獲得を続行する方針を示唆」、9位「世界観が素晴らしい――ソフトバンク孫社長がiPhoneの魅力を熱弁」、13位「これがソフトバンク版iPhone仕様?米ガートナーが次世代iPhoneを予想」、14位「【WWDC】199ドルの「3G iPhone」,日本でも7月11日に発売へ」、15位「iPhone発売48時間前,ソフトバンク表参道前には徹夜組18人」、16位「iPhone発売48時間前,ソフトバンク表参道前には徹夜組18人」と20位中11本を占めています。
こちらも同様に発売前後の騒ぎを取り扱った記事が多いのですが、逆に発売前後に情報収集をしてみたが、購入を見送ったというごく一般的な傾向が見て取れるようです。一般的なハードウェアと同様に、初期の評判で評価を決定できないiPhoneの難しさが現れています。
まさかあれほど後矢継ぎ早にファームウェアアップデートが行われ、まったく別マシンであるかのように生まれ変わっていくiPhoneを見ることができるとは、ほとんどの方が想像できなかったのではないかと思います。
実際、私自身Wikiやblogで状況を追いながらも、この変化の早さには本当に驚かされました。外部から見てこれほどのスピード感であれば、恐らくApple社内部では恐ろしいほどの速度で物事が決定されているのではないかと考えられます。もちろん、初期ビジョンがしっかりしているために、方針が揺らぐことがないことも影響しているでしょう。
いまや徹底的に叩かれた日本語テンキー入力は誰も話題にすることがなくなるほど快適なものになってしまっており、絵文字までが使えるようになったのは、まさに進化するハードウェアiPhoneの魅力をキャリアではなくメーカーであるAppleが支配することで存分に活かしきっているという証拠でもあります。
7位の記事の今となってはどこか懐かしさを感じるdocomo社長の「iPhoneを獲得する方針」の言葉に続く孫社長の言葉が、当時の状況としてはなかなか示唆に富んでいますのでご紹介したいと思います。
※ちなみに、このdocomo社長の発言は撤回されたのでしょうか?現時点まで何らの追加発表もしないのでは、docomoを信じ、docomoから出るのを待ち続けたユーザーから、裏切りだと言われても致し方ないでしょうね。こんなところにも、自分の会社だけが大事で顧客(ステークホルダー)を大事にしない姿勢が現れているようです。
さて、その質疑応答を9位「世界観が素晴らしい――ソフトバンク孫社長がiPhoneの魅力を熱弁」から見てみましょう。
世界観が素晴らしい――ソフトバンク孫社長がiPhoneの魅力を熱弁:ITpro
都内で開催された通信事業者の会合に参加したソフトバンクの孫 正義社長は2008年6月13日,7月11日に発売するiPhoneについて報道陣の質問に答えた。価格設定や販売方法について説明したほか,アップルとの交渉を経て販売契約を獲得したiPhoneの魅力について語った。主な発言は下記の通り。
以下、非常に示唆に富む受け答えが続きますが、注目すべきは2008年6月13日、つまりあのiPhone 3G発表の数日後、ソフトバンクから発売されるという電撃的な数行のリリースがあった時のインタビューだということです。やはり、ここまでの理解がないと獲得は難しかったと言うことですし、ここまでの理解がd社トップにできていたのかと問われれば、なかなか難しいところだったでしょう。
※細かい話は担当者レベルで詰めるとはいっても、交渉の初期段階はまずトップ同士での事業ビジョンや方向性の話し合いを行うものです。その際に、単なる端末の調達の話だと勘違いしたり、「iモードは世界に優れた****」だとか、自社の電波状況や現状シェアを威張り散らされても、なんらジョブズの心に響くことはなかったということです(こんな話があったと言う訳ではなく、恐らくされたであろうという妄想です)。
なぜなら、シェアはiPhone自体が獲得するものであり、電波状況は3G以外にWi-Fiも併載するというiPhoneならではの特徴があるためです。また各国キャリアが展開するサービスほど全世界展開を考えるAppleにとって邪魔なものはなかったでしょう。ましてやAppleはAppStoreを展開しようとしていたのですから、iモードは(思想は違えど)競合も競合、むしろ邪魔なものでしかなかったわけです。
ソフトバンク発表前には業界記者の7割以上がdocomoからの発売を予測したわけですが、今考えるとすべて必然とも思える提携条件だったわけで、これをクリアし、さらには熱意を持って取り組むトップでないと意味がなかったわけです。だからこそ絵文字も実現できたし、発売が遅れているワンセグチューナーについてもApple社の発売に関する同意を得られたのでしょう。
質疑は続きます。
- 在庫は潤沢に用意できるのか。販売方法は。 アップルが世界的に製品を用意することになるので,潤沢ではない可能性がある。発売直後はお待たせするかもしれない。製品は,ソフトバンクショップのほか,アップルストアでも販売する。アップルとの契約上では,国内で独占販売とはなっていない。ただ,実質的には我々が優位な状態にあり,独占といってもいい。
今なら理解できます。12月16日から始まったAppleリテールスアでの発売開始がここでも明確に述べられています。キャリア独占か否かという(ケータイ業界では当然の)議論ではなかったということですね。
- 実際にiPhoneを触ってどう感じたか。
世界観が素晴らしい。パソコンとのデータ連携ツール「MobileMe」を用意したほか,Exchange Serverにも対応してビジネス用途にも対応した。ゲームなど多くのアプリケーションが登場するだろう。
オブジェクト指向のSDKも注目に値する。マウス操作で何十分と短い時間でアプリケーションが作成できるのは驚きだ。従来,携帯電話のアプリケーションは閉じたプラットフォームで作られており,新しい機種が登場すると作り直す必要があった。iPhoneのSDKは,既に20数万のエンジニアがダウンロードしたという。作成したアプリケーションはiTunesストアで売れる。流通段階まで提供されている点が魅力だ。
こうしたOSや流通段階のシステムを一から作るとなれば,5年はかかるだろう。iPhoneをまねた端末が登場してくるかもしれないが,iPhoneのようなSDKやiTunesストアを含めたシステムはない。iTunesと組み合わせて利便性を高めたiPodと,単純なMP3プレーヤーで大きく差がついたが,同じような位置づけとなるだろう。
従来からSymbian OSやWindows MobileといったOSもあったが,iPhoneは数十年の技術の蓄積があるMac OSをベースにしているという優位性がある。ファームウエアについても従来の携帯電話とは思想が違う。ファームウエアをアップグレードして,機能を追加できる。柔軟性はパソコンと同レベルだ。
ここでも的確にiPhoneを捉えていますね。SDKの技術特性にまで言及しています。
また、今でこそ言い尽くされた流通システムまでをも含めたAppStoreの特徴を一言で言い切り、その優位性を指摘しています。
キャリアトップが、一端末の世界観の素晴らしさを語っても意味がないわけですが、あえてそれをここで言いたかった孫社長の気持ちはiPhoneユーザーならば痛いほど理解できるでしょう。
もちろん、実際のiPhone獲得活動が苦しかった状況も述べています。
- 他社にさきがけてiPhoneの販売契約を獲得できた理由は。
精一杯に努力を尽くした結果だと考えている。
結局これに尽きたのでしょう。これが出来たキャリアトップと、出来なかったキャリアトップ。この差が出てしまったのです。
当初iPhoneユーザーの中には(様々な経緯から)ソフトバンクと契約するのを良しとしなかった方もいるでしょう。しかし、恐らく現時点ではその評価が変わっていると思います。
まさか2008年6月時点で、絵文字が公式な方法で実現すると思っていた方はほぼいなかったでしょう。それも日本語キーボードの一種と言う、実にスマートな方法での実現だったことにいまだに驚きを隠せません。またワンセグチューナー発売についても、各国ごとの仕様への対応はApple社が一番嫌がったはずです。それを熱意を持って説得できたのは、恐らく日本のキャリアでも一社だけだったのではないかと思います。
料金プランも他キャリアのように制限のないものであり、必要とあれば関係会社の公衆無線LAN網の無償開放までやってのけたのは、どう見ても他キャリアには不可能であったのです。※docomoは自宅経由のVoIPですら料金徴収を行います。そういう会社体質なのです。
もちろん、絵文字もワンセグも使わない、必要ないという方もいるでしょう。しかし重要なのは「全ユーザーにとって選択肢があるという状態」だと考えます。その選択肢を用意してくれたソフトバンクには感謝したいと考えています。

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