日経ビジネス リポートの連載記事「ゲームが破る閉塞」のシリーズ第三弾で、セガ ネットワーク戦略事業部 株田実モバイル統括部長がiPhoneプラットフォームについて語っています。
それによると、
「『アップル+ゲーム』が生む商機逃がさない」〜ゲームが破る閉塞(3)
今まで携帯電話向けゲームといえば容量の小さい手軽なものというイメージがあり、ずっと同じ路線になって煮詰まっていた。しかしアップルは、従来の携帯電話とは、明らかに違う世界を提示している。それは素晴らしいことだ。
ゲームソフト会社にとり、アップル向けにゲームを開発する魅力は大きく2つある。
まずビジネス面では、ゲームの開発・販売の窓口が一本化されることだ。当社は従来から携帯電話向けにゲームを手がけてきたが、通信事業者ごとに開発して提供する必要があった。しかしアイフォーンでは、通信事業者に関係なく、アップルのネット上の販売サイトでダウンロード販売できる。
携帯電話は性能が異なる様々な機種があるので、個々の端末に対応するためのコストが非常に大きくなる。別の機種に対応するには、移植や動作検証に手間がかかるからだ。携帯電話向けゲームは初期の開発コストはそれほど高くないが、その後の移植や検証コストの方がむしろ高かった。しかしアップル向けでは開発コストを抑えられる。
まず冒頭でiPhoneがゲームプラットフォームとしても魅力的であることから話が始まります。
ビジネスとして考えると、氏が語る「窓口の一本化」、「開発コストの低減」をあげています。この部分は、利用者からは見えづらいことですが事業者としてはもっとも痛い部分であったのです。
「906i」などといいつつ、その実メーカーごとに仕様がバラバラで結局は膨大な数の実機テストを余儀なくされてきたのがケータイ向けアプリ開発であったのです。ケータイアプリ開発会社に行くと、どの会社でも壁一面を占める実機コーナーが存在し、テスター要員を多数投入した上で互換性検証を開発会社持ち出しで実施してきたわけです。
※キャリアでも一部検証センターなるものを運営しているが、利用コストが高く、またそれほどキャパシティを用意していないために混雑し、実態としては利用されていない。
それが、iPhoneでは英語モードを実装した場合には現時点で1千万台以上のオーダーの互換性を保障された販売プラットフォームが存在するのです。これはデベロッパーにとっては他にない魅力であることは間違いないでしょう。
ゲームを供給する窓口が多いのも携帯電話向けにゲームを開発するソフトメーカーの悩みだ。世界には多数の通信事業者が存在するが、それぞれに対して営業活動を行う必要があった。それがアップルだけで済んでしまう。ゲームソフトメーカーとしては、たった1カ所で世界中に向けて販売できるメリットは大きい。ゲームを購入する人にとっても1カ所で全てが手に入るのは便利だ。
アップルとソフトメーカーの間の収益分配も、バランスが取れている。ソフトが1本売れると、アップルが3割、ソフトメーカーが7割を受け取る形になっている。携帯電話向けゲームでは、海外の通信事業者が4〜5割の手数料を取ることを考えると非常にリーズナブルな水準だ。
もう1つが機能面の魅力である。加速度センサーやタッチパネルなどのユーザーインタフェースは卓越している。従来の携帯電話向けゲームよりも、本格的なゲームをユニークな機能を使って提供できる。無線LAN(構内情報網)やパソコンを経由して大容量のゲームをダウンロードできるメリットも大きい。
アップルのアプリ審査基準がクローズドで若干公平性を欠く点は事実だと思います。しかしながら、プラットフォーム販売者でありサービス事業者でもあるアップルが審査主体にならざるを得ず、それが(3G以降の)低コストでiPhoneを提供できる源泉にもなっているのです。これをいま完全に否定すれば、コスト構造が変化し結局はエンドユーザーに跳ね返ることは目に見えています。もちろんアップル自体も公平でオープンな審査基準を設けていくべきですが、まだAppStoreが開始3ヶ月であることを考えればもう少し長い目で見ていくべきでしょう。
しかも重要なことは、クリエイターが魅力を感じるプラットフォームであるか否かという点です。デベロッパーとしても開発投資先としての魅力もあり、クリエイターが利用してみたい機能を兼ね備えるプラットフォームというのはもしかすると据え置き型・携帯型を含めてゲーム機としてもなかったのかも知れません。
※初期のDSが魅力的であったことは否めません。またゲーム機にそういったデバイスを搭載するという選択肢を提示して見せたというその功績も、非常に大きいでしょう。しかし発売から4年経つ現時点で考えると、GPSや(Wiiで実証された)加速度センサーなどのデバイスを持つことが今後の必須課題ではないかと思われます。
もちろんいい点ばかりではありません。
ただしハードルもある。アップル向けのゲームは、開発ツールが無料なので、非常に参入しやすい。素人でもゲームが作れる。従って、アップルならではのユーザーインタフェースを意識した本格的なソフトを作る必要がある。単純にゲーム専用機や携帯電話向けのゲームを移植するだけでは、ユーザーに満足してもらえない。加速度センサーやタッチパネルなど、アイフォーンならではのソフトを厳選して投入する必要があると考えている。
有象無象のコンテンツの中に飲まれてしまうというネガティブな側面もある。既にゲームだけで800以上が販売されており、無料ゲームも多いので、その中に埋もれてしまうリスクがある。売れるソフトを作るのは簡単ではない。
だから1本のソフトが成功したからといって、立て続けに出そうという考えはない。世界でブランドが知られているセガならではのゲームを工夫して、アップル向けに出していく。当社の場合、その第一弾がスーパーモンキーボールだった。
世界中でゲームユーザーはかつてなく増えている。日本では、今までゲームをしなかったおじさんが、電車の中で、携帯電話のゴルフゲームをするようになった。携帯電話がゲーム人口の裾野を広げたことに間違いはない。同じようにアップルも、世界で新しいユーザー層を開拓してくれることを期待している。(談)
現時点では、AppStoreのゲームカテゴリーはすでに1400本を超えています。セガといえども、油断をすれば一瞬で波に飲み込まれてしまうでしょう。
これについては、(iTunesストア改善など)アップルが努力すべき所も多くあるかと思いますが、ユーザー主導のアプリ評価サイトなどの発展も期待されるところです。
しかし最後の一文は残念な認識ですね。プラットフォームを切り開いていくのは何もアップルだけではないと考えています。そのプラットフォームで商売するものもまた、(全部ではなくとも)その任を負っていると考えるのは私だけではないと思います。
セガには過去の資産・ゲーム作りのノウハウがあるわけで、そういった資産を活用しながら魅力あるゲームを開発・提供することにより、新たなユーザー層を開拓する立場でもあるのではないでしょうか?ましてや、セガは現時点のAppStoreでのビッグプレイヤーであることは間違いありません。むしろ自ら主導するくらいの意気込みで積極的な展開を期待したいところです。
それこそが、この連載タイトルにこめられた意味でもあるのですから。



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