AppStoreで大好評の駅探ですが、それを開発したのは「HMDT株式会社」という木下氏が代表を務める会社です。
その木下氏が、例の三井系ベンチャーが開催するコンテストのアプリケーション開発技術情報のページでインタビューに答えています。
あの”Apple純正アプリよりもUIが優れている”とまで言われる駅探を生み出すことができたのか?が少し理解できる内容となっていますので必読でしょう。
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── 確かにユニークで使いやすい駅探エクスプレスですが、このユーザーインターフェイスをデザインするにはiPhone内部のことも熟知していないといけないのではないですか?
木下 そうですね。たとえば、駅探エクスプレスのアプリ内で、画面全体がアニメーションで縮小表示される部分がありますが、その実装には「コア・アニメーション」というフレームワークを利用しています。これはMacOS Xにもあるユーザーインターフェイスのためのフレームワークですが、それをあらかじめ知っていたので、この機能を当初から盛り込めました。
木下 それと同時に、ユーザーインターフェイスを構築する際に、ユーザーのメンタルモデルがどうなっているか、ということを徹底的に議論しました。たとえば、検索結果の画面ではタテに時間軸があります。出発駅、路線、到着駅の順に上から下に向かって時間が流れるように表示されています。これはある1つの乗り換え検索結果の1つの時間軸です。一方で、ほかの乗り換え検索結果に切り替える場合、画面をヨコに切り替えます。つまり、複数の検索結果は縦方向のパラレル方向で示されるわけです。
ここは駅探を触っていて一番の気持ちいいところですね。
単に縦にスクロールするから気持ちいいのではなく、「その時のユーザーのメンタルモデル」がそうなっているからこそ、操作に対して心地よさを感じられるのですね。気持ちよさが、こういう実に細やかなユーザーのメンタル面分析から生まれていることがよくわかります。
── この駅名絞り込みのユーザーインターフェイスを考えたキッカケはなんですか?
木下 これは「ドリルダウン方式」という検索方式ですが、駅探さんとは、iPhoneが登場する前からアプリの開発を予定していました。そのとき、日本語入力環境がどのようなものになるのかまったく発表されていなかったので、この入力方式をあらかじめ提案しました。
また、タッチパネルであることを考えると、キーボード入力というのはやはり手間がかかるのでは……と予想していたこともあります。それから、文字入力で駅名を指定すると、その入力された文字列が実際の駅名として存在するかどうかをサーバに問い合わせて結果を返す、というプロセスが生じます。ドリルダウン式だと、ローカルにあるデータの中から駅名を選択することになるので、その確認の手間が不要です。「駅名」という限られた文字列だからこそメリットがあるわけです。
── これらの部分に御社のノウハウが発揮されているわけですね。
木下 そうです。我々の開発経験から、MacOS系なら「こういったインターフェイスのほうが馴染むだろう」「ユーザーがすんなり使えるのでは?」という予測が立てられるようになりました。
次に、駅名指定のドリルダウン方式の検索インターフェースについて。
ここもノウハウがない会社だと、単純なテキストボックスだけを配置してみたり、逆に細かすぎる路線図マップから選択させたり、もう少しマシなものでもインクリメンタルサーチを設置するのが関の山でしょう。しかしHMDTが作るとこうなります。
データ構造やデータ特性を考え、ユーザーのメンタルも考えた結果が、あのドリルダウンだったということですね。
── そのデザイン思考は、iPhoneにも必要ですよね?
木下 そうですね。iPhoneでは画面の大きさもかなり限られているので、あまり多くの機能を1画面に盛り込むと、誤操作が増えることとなり、ユーザーに不快感を与えかねません。ユーザーを、いかにして快適なまま目的の機能へ導くのか、という考え方が必要でしょう。
それから、iPhoneにしてもほかのApple製品全般にしても、「初心者にやさしい」ということはないと思うのです。どちらかというと不親切だと思います。ある程度使ってみて「このボタンはこういう機能が」「このユーザーインターフェイスはこういう意味なのか」ということが分かってくるものなのです。多くのMacOSアプリは、先ほどちょっと出てきた「ヒューマンユーザーインターフェイスガイドライン」に則って統一されています。そのため、あるアプリでいったん操作に慣れると、ほかのアプリでは、初見でも容易に操作できるという現象が起こります。この点が「Apple製品の使いやすさ」だと思います。ですから、ガイドラインに則したユーザーインターフェイスデザインも、アプリ開発には欠かせない要素でしょう。
ここが一番の肝に感じました。
そうなんです。今までMacOS Xに触れていないような方がiPhoneを買ってきて、一番最初にハマるのがこういう理由でしょう。外見上「タッチパネルだから使いやすそう」とか勘違いするのですが、逆に「何をするのか?」という明確な目的がない場合には使いづらかったり、やはりメニュー構造などを理解するまではそれ相応の苦労が伴うのはどの製品でも同じです。しかし、iPhoneなどのApple製品が異なるのは、その後からです。
iPhoneが日本で発売されて何週間か経ったころ、「iPhoneユーザーからの満足した声が聞こえない」という意見を見かけました。それこそ、まさにiPhoneを機能でしか見れない未使用者の感じる所だったでしょう。
今までのケータイであれば、「おサイフケータイ便利」とか「ワンセグがいい」、「音楽が1,000曲入る」といった個々機能についての感想が聞けたのです。しかしiPhoneを使い込むようになると、自分が行動しようとしたことに対して実に素直に動作してくれるようになるため、その心地よさに包まれて機能を意識して使うといったことが薄らぐのです。何十年も使い込まれた道具のような感覚になるといえば伝わるのでしょうか。
その為に「何がいいの?」と聞かれても、「うーん。どこと言われても言えないけど、すごくいいよw」としか返せない状態になってしまうのです。つまり、”そもそも何かをするために搭載された機能がナマのまま乗っかっている”のではなく、”実際に使う局面を想定してチューニングされている”からこそ、操作することに対してすら快感を生み出しているのです。
しかし、そんなiPhoneを少し触れば誰でもわかるような感想も、上記インタビューにあるように実に細やかな利用者の精神面の想定をも行った結果生み出されているということを再確認させてくれます。そこを怠ると、某社アプリのように数日でStoreから自主取り下げという憂き目を見る羽目になってしまうのです。
そういった意味では、実に興味深いし、チャレンジしがいのあるカテゴリーではあるけれども、奥が深くて怖い世界であるともいえるのではないでしょうか。
駅探エクスプレスはさらなるバージョンアップを続けるということですし、今後もHMDTさんのすばらしいアプリを期待したいところです。



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